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暗黒童話

乙一 / 2001 / 小説

読者が誤認するもの

時間›時系列の誤認›並行
人物›人物の誤認›一人を複数
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層メタ
叙述N-時間の並行N-人物の同一と別
効果E-同時に描かれる二つの場面は同じ時刻であるE-別の名前は別の人物

⚠️ このページは作品の核心(真相)に触れます。未読・未視聴の場合はご注意ください。

まだ読んでいない方へ。この下は真相に触れます。

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仕掛けの要約【ネタバレ】

作品は三つの流れを交互に重ねて進む。一つは、冒頭と中盤に置かれる童話「アイのメモリー」。目のない少女のために、言葉を話す鴉が人々の眼球を奪って届ける話で、作中では童話作家の著作として扱われる。二つ目は、事故で左目と記憶を失った女子高生・菜深の章。移植された左目が提供者の青年・和弥の見た光景を再生し始め、菜深はその記憶に導かれて和弥の育った町を訪ね、彼の死と、行方不明になった少女の行方を追う。三つ目は、傷つけた相手に痛みを与えず死なせもしない能力を持つ人物・三木の章で、彼が人をさらい、身体を作り変えていく様子が描かれる。

読者は、三木の章を菜深の章と同じ時期の出来事として読む。菜深が町で出会う人々のうち、誰が今まさに三木として犯行を続けているのか、という問いを立て、怪しい振る舞いのある人物を順に疑っていく。

真相では、三木の章は菜深の話よりおよそ一年前の出来事で、和弥が生きていたころの話である。三木は、菜深が町で出会っていた喫茶店の常連・住田と同一の人物だった。読者が並行と思っていた二つの流れの時期のずれが明かされると、菜深の章で疑いを集めていた人物は外れ、目立たなかった人物が犯人として浮かぶ。

騙しの技術

  • 時期を書かずに交互に並べる。 三木の章と菜深の章は、どちらも「いま」として語られ、章の切り替えで時期の差が示されない。読者は交互に置かれた二つの流れを同じ時間の出来事として受け取る
  • 呼び名を分ける。 三木の章で使われる呼び名と、菜深の章で使われる呼び名が違うため、読者は二人を別々の人物として数える。三木の正体は「菜深の周囲の誰か」という問いになり、すでに別の名で登場している人物は候補から外れる
  • 疑う相手を用意する。 菜深の章には、三木の章の描写と結びつきそうな手がかりを持つ人物が置かれ、読者の疑いは順にそちらへ向かう。時期を同じと読んでいる限り、それらの手がかりは「いま三木である人物」を指しているように見える
  • 作中童話で犯人の問いを立てる。 童話の作者は誰か、という問いが物語の表に出ており、読者はその問いを菜深の周囲の人物に当てはめて解こうとする

フェアプレイの担保

  • 三木の章の出来事と、菜深が左目の記憶で見る和弥の生前の出来事は、同じ時期のものとして読み返すと噛み合う。真相を知ると、三木の章は過去の事件の記録として通る
  • 時期のずれに途中で気づいたとする感想があり、読み進めるうちに気づける作りになっている
  • 犯人の持ち物に関わる小さな手がかりが、菜深の章に置かれている、とする感想が複数ある

効き目

  • 多くの感想が、犯人を予想していなかった、最も疑わなかった人物だった、と書く。二つの流れを同じ時期だと当然のように思っていた、と仕掛けの所在を名指しする感想も複数ある
  • 疑いの対象が一人目から二人目へ移り、さらにそれも外れる、という二段の外し方で驚いたとする評が多い
  • 叙述の仕掛けがあると知らずにホラーとして読んだ読者ほど強く驚いた、とする感想がある

弱点・破綻しやすい点

  • 怪異の設定が推理の足場を崩す。 眼球が記憶を持つこと、傷つけても痛まない能力など、超常の設定が謎の前提にあるため、ミステリとしては反則に感じる、とする評がある
  • 途中の誤誘導が粗い。 終盤の疑いの向け方を雑に感じた、疑いを向けられる人物がいかにも囮に見えた、とする感想がある。囮が見えた読者には、その奥にもう一段あることまでは見抜けたとする声もある
  • 時期のずれに中盤で気づいた、とする感想があり、気づく読者には仕掛けが早めに透ける
  • 長編としての前半の運びが遅いと感じる読者があり、仕掛けが効くのは終盤に集中する

読み返してみませんか。

仕掛けを知ってから読むと、同じ記述が別の意味で通ります。

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