仕掛けの要約【ネタバレ】
連作短編集である。複数の短編に、それぞれ別の仕掛けが置かれている。
死に惹かれる少女と、殺すことに惹かれる少年。
二人が猟奇的な事件に関わっていく連作。
一冊の中で、少なくとも4種類の異なる誤認が設計されている。
### 種の誤認
ある短編では、読者は語り手を犬の視点として読む。
実際には人間の少女であり、犬なのは別の存在である。
年齢の曖昧さが使われている——
犬の寿命と少女の年齢が重なる範囲に、記述が収められている。
### 双子の入れ替わり
別の短編では、死んだのは一方だと読者が思っているが、もう一方だった。
### 人物の取り違え
別の短編では、埋められていたのは主要人物だと読者が思っているが、別の少女だった。
### 語り手の同一性
別の短編では、読者が同一人物だと思っていた二人が、別人である。
少女と一緒にいる少年を、読者はそれまでの語り手だと読む。
騙しの技術
属性が重なる範囲に記述を収める。
種の誤認では、犬にも人にも当てはまる記述だけで場面を作っている。
年齢・行動・感覚——いずれも両方に解釈できる範囲に留めてある。
→ 作り手は嘘を書いていない。読者が一方に決めている。
一人称の「私」「僕」を、誰にも紐づけない。
名乗らせず、他者から呼ばれる場面を作らない。
連作であることを利用する。
同じ登場人物が続けて出てくるため、
読者は「今回もあの語り手だろう」と前提する。
→ 前の短編で作られた了解が、次の短編の仕掛けに使われている。
一冊の中で手を変える。
種・双子・取り違え・同一性——同じ手を繰り返していない。
→ 一つ見抜いた読者も、次では別の型に当たる。
フェアプレイの担保
- 種の誤認では、どちらにも解釈できる記述しか置かれていない
- 語り手の同一性では、同一だと明言した箇所がない
- ⚠️ ただし連作形式のため、前の短編で作られた前提を利用している点は、
フェアかどうかの評価が分かれうる
効き目
- 一冊で複数の型を体験できる
- 短編ごとに完結するため、仕掛けの密度が高い
- 猟奇的な題材が、注意資源を奪う装置として働いている(観察メモ★6)
弱点・破綻しやすい点
- 連作全体を読まないと、人物の全体像が分からないという構成上の制約
- ⚠️ 版によって収録順が異なる。
読む順序が変われば、前提の作られ方も変わる
- 短編ごとの分量が短く、落差が大きく取れない(TDB-0051 と同じ弱点)