一覧 / 葉桜の季節に君を想うということ

葉桜の季節に君を想うということ

歌野晶午 / 2003 / 小説

読者が誤認するもの

人物›人物の属性›年齢
人物›人物の誤認›複数を一人
時間›時系列の誤認›順序
詳しい分類を見る
層メタ
叙述N-人物の属性N-人物の同一と別N-時間の順序
媒体固有T-小説/一人称の空白T-小説/呼称の揺れ
効果E-語り手は正直E-同じ名前=同じ人物

⚠️ このページは作品の核心(真相)に触れます。未読・未視聴の場合はご注意ください。

まだ読んでいない方へ。この下は真相に触れます。

先に作品にあたるなら、こちらから。

PR:本ページはアフィリエイト広告を含みます。

ミステリは“聴いて”楽しむこともできます(Audible 30日間無料体験)

仕掛けの要約【ネタバレ】

読者は登場人物たちを若い世代の話として読む。実際には中心人物は高齢者である。

年齢という属性ひとつを伏せることで、恋愛・肉体・行動のすべての意味が変わる。

加えて、別人として読まれていた人物同士が同一人物であることも明かされる。

騙しの技術

若さの証拠に見えるものを、事実として置く。

筋力トレーニング、身体的な描写、機器の扱い——いずれも高齢者にありえないわけではない。

「若者しかしない」と読者が勝手に決めているだけの行動を積み上げる。

呼称で年齢を出さない。

相手を名前でなく二人称で呼び続ける関係が設定されており、

呼びかけの言葉から世代を推し量る手がかりが与えられない。

また、家族内の呼び名は文脈次第で複数の世代関係を指しうる。

複数の時期を並べる。

異なる時期の出来事が並列に置かれ、読者は人物の対応関係を整理しきれないまま読み進める。

フェアプレイの担保

  • 年齢を偽る記述はない。書かれているのは事実だけで、解釈が誘導されている
  • 古い時代の文物への言及など、世代を示す手がかりが本文中に置かれている
  • 真相の開示後、同じ描写が矛盾なく読み直せる

効き目

  • 年齢の誤認は、恋愛描写の意味そのものを反転させる。仕掛けが情緒に直結している
  • 題名が真相を指しており、読み終えると題の意味が変わる
  • 「若さとは何か」という主題と仕掛けが同じものを指している

弱点・破綻しやすい点

  • 若々しい行動描写を積むほど、警戒した読者には「なぜここまで書くのか」と逆に目立つ
  • 映像化が難しい。顔が映る媒体では年齢を伏せられない
  • 現代の読者は叙述トリックの存在自体を予期しているため、属性の伏せ方は疑われやすい

読み返してみませんか。

仕掛けを知ってから読むと、同じ記述が別の意味で通ります。

関連する型殺戮にいたる病

← 一覧に戻る