仕掛けの要約【ネタバレ】
「この本の全編に叙述トリックがあります」と、読む前に宣言している。
題名がそのまま予告になっており、
帯にもすべての短編に仕掛けがある旨が明記されている。
さらに巻頭には読者への挑戦状が置かれ、
各話のヒントまで与えられている。
それでも読者は騙される。
加えて、本のカバーと帯そのものが騙し絵になっている。
仕掛けは本文の中だけでなく、手に持っている物体の表面にも置かれている。
騙しの技術
先に告げる。
仕掛けの存在を隠さないどころか、題名にして売る。
読者は身構える。
しかし身構えた読者は「どこに仕掛けがあるか」を探し始める——
探している場所以外が無防備になる。
ヒントまで与える。
挑戦状で手がかりを渡すことで、読者の注意を特定の方向へ向けさせる。
注意を集めることは、注意をそこ以外から外すことでもある。
短い形式を選ぶ。
一話が短いため、読者が身構えを維持したまま読み切れる。
にもかかわらず破られる、という体験を何度も反復させる。
外装にも置く。
カバー・帯は本文ではない。
読者は本文を疑っても、手に持っている物の表面は疑わない。
電子で読むと、この部分は成立しない。
フェアプレイの担保
- フェアさが極限まで担保されている型である。
仕掛けの存在・個数・ヒントまで事前に開示されている
- 各話は独立しており、真相は本文中の記述だけで判定できる
効き目
- 「予告してから使う」の到達点。 予告を作品の題名・商品の売り文句にまでしている
- 反復によって、騙されること自体が読書体験の主題になる
- 媒体の物理(カバー・帯)を使うため、紙で読む理由が生じる
弱点・破綻しやすい点
- 短編ゆえに落差が小さいという評価がある。
仕掛けまでの助走が短く、驚きの振れ幅が長編に劣る
- 予告があるため、見破る読者が一定数出る
- 外装の仕掛けは電子書籍で失われる。
流通形態によって作品が変わってしまう
- 題名が仕掛けを名指ししているため、この本自体が他の作品のネタバレになりにくい代わりに、 「叙述トリックとは何か」を知らない読者には訴求しない