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ハサミ男

殊能将之 / 1999 / 小説

読者が誤認するもの

人物›人物の属性›性別
人物›人物の隠匿›視点人物の隠匿
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層メタ
叙述N-人物の属性N-語り手の正体
媒体固有T-共通/通称の含意T-小説/一人称の空白T-小説/章題と目次
効果E-語り手は正直E-一人称は同一人物E-通称は対象の属性を示す

⚠️ このページは作品の核心(真相)に触れます。未読・未視聴の場合はご注意ください。

まだ読んでいない方へ。この下は真相に触れます。

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仕掛けの要約【ネタバレ】

一人称で語る連続殺人犯を、読者は男性だと読む。実際には女性である。

さらに、その語り手と、作中で容疑者として浮上する人物が別人であることも、

読み進めるあいだは意識されない。語っている当人の属性と正体が同時に伏せられている。

騙しの技術

題名が最初に嘘を引き受ける。

題名に「男」の語が含まれる。これは作中で報道が付けた通称であって、

作中人物が根拠なく呼んでいるだけという構造になっている。

読者は本文を読む前に、題名によって性別を決めてしまう。

一人称を男女どちらでも使える語にする。

語り手の一人称は性別を確定させない語が選ばれている。

加えて、話し方がぶっきらぼうに書かれ、性別への違和感が消される。

容疑者像と語り手像を重ねる。

警察の捜査線上に浮かぶ人物の年齢や体格が、語り手の自己認識と近い位置に置かれる。

視点が交互に切り替わることで、読者は両者を無意識に同一視する。

フェアプレイの担保

  • 性別を偽る記述はない。通称・一人称・話し方という、いずれも嘘ではない要素の積み上げ
  • 手がかりが本文に置かれている:他人の口調への言及、被害者の遺体の状態に関する記述、

衣服に関する描写など、性別を推定できる記述が複数ある

  • 語り手の内面には別の人格が現れ、その人格は別の一人称を用いる。語りの構造自体が提示されている

効き目

  • 題名という、本文の外側の要素が仕掛けの主役になっている。読む前から騙されている
  • 犯人視点で進む倒叙形式のため、読者は「犯人が誰か」ではなく「どう捕まるか」に注意を向ける。

注意の向き先そのものが誘導されている

  • 真相開示後、語り手の自己認識に関する記述がすべて別の意味を持つ

弱点・破綻しやすい点

  • 一人称の性別隠しは、叙述トリックの型として広く知られている。警戒した読者には見抜かれやすい
  • 題名に依存するため、題名を変えられる場面(翻訳・映像化・別媒体展開)で威力が落ちる
  • 語り手の話し方を「男性的」に寄せるほど、真相開示後の人物像に負担がかかる

読み返してみませんか。

仕掛けを知ってから読むと、同じ記述が別の意味で通ります。

関連する型殺戮にいたる病葉桜の季節に君を想うということ

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