仕掛けの要約【ネタバレ】
昭和後期の墨田区で、本所七不思議にまつわる呪いの力を得た者たちが、死者を蘇らせる秘術をめぐって呪い合う群像劇のアドベンチャーゲーム。冒頭から、翁の面をつけた案内人が古いカラーテレビの横に立ち、画面の前の受け手に直接語りかけて物語を見せる。受け手は案内人に導かれ、複数の視点人物の物語をストーリーチャートで切り替え、ときに時間を巻き戻して選び直しながら進む。
受け手は、自分を物語の外の存在だと受け取る。ゲームは最初から、受け手と作中の主人公たちを別のものとして扱う。案内人は受け手に話しかけ、受け手は視点人物の行動を選ぶ。さらに、行き詰まった場面を、ゲームの設定画面や手動セーブといった、作品の外側にある機能を操作して切り抜ける謎解きがある。受け手は、自分がゲームの外から物語に手を貸している、と信じるようになる。
終盤、その位置が覆る。受け手は作中の存在、すなわち過去の時代の陰陽師の精神だった。視点人物に乗り移って選択に関わっていたのも、時間を巻き戻していたのも、作中の出来事として起きていたことになる。作中で受け手の働きとされていたものは、ゲームの機能の比喩ではなく、物語の一部だった。
この位置の反転は、冒頭の場面にも及ぶ。最初の物語で、ある女性が視点人物の目の前で突然死ぬ。受け手はこれを、まだ見ぬ誰かの呪いによるものと読む。真相では、その死を招いたのは、視点人物に宿っていた陰陽師の精神、つまり受け手自身の側だった(呪いを向けた女性が、返り討ちにあったと読める)。
騙しの技術
- 受け手と主人公を、はじめから切り離して見せる。 受け手を主人公と同一視させる型(Ever17 -the out of infinity-・Remember11 -the age of infinity-)とは逆に、本作は「あなたは主人公ではない、外から見ている者だ」という形を最初に与える。受け手は切り離しを受け入れた時点で、自分の位置を問わなくなる
- 案内人に受け手を呼ばせる。 物語の外に立つ人物が、画面の前の受け手に語りかける。外の人物が外の受け手に話しているという構図そのものが、受け手を物語の外に置く
- 作品の外側の機能で謎を解かせる。 設定画面の音量や手動セーブといった、本来は作品の外にあるはずの操作で場面が動く。受け手は、自分がゲームの外から手を入れていることを体で確かめる。同じ操作は、終盤では作中の存在の働きとして読み直される
- 巻き戻しを、ゲームの機能として渡す。 ストーリーチャートで時間を戻して選び直す操作は、周回の便利な機能に見える。実際には作中で時が戻っている(極限脱出ADV 善人シボウデス の一覧表と同じ扱い)
- 冒頭の死を、受け手の手の届かない出来事として見せる。 受け手は、最初の死を自分と無関係な呪いの結果と受け取る
フェアプレイの担保
- 作品の外側の機能を使う謎解きは、序盤と中盤に1回ずつ置かれ、作り手は最後の反転のための伏線だと述べている
- 冒頭の場面では、視点人物が拾った呪いの品が、死んだ女性の側に落ちていたものだという描写がある。視点人物がその品の本来の持ち主ではないことは、のちの場面で示される
- 受け手が作中の人物の判断に関わっていることは、作中で隠されていない。隠されているのは、関わっている受け手が何者かという一点である
効き目
- 受け手は、自分がゲームの外にいると信じた根拠(案内人の語りかけ、外側の機能を使った謎解き、時間の巻き戻し)を、すべて作中の出来事として読み直すことになる。信じた根拠が多いほど、反転の範囲が広い
- 終盤に示される、作中の存在の内訳の一つに受け手の名前が入る形で、受け手が作中に数えられる。プレイヤー自身がその存在だったという展開に驚いたという感想がある
- 冒頭で死んだ女性の場面に戻ることが真の結末への道になるので、最初に見た場面の意味が反転したまま、そこに立ち返ることになる
弱点・破綻しやすい点
- 受け手を作中の存在とする型は、ゲームでは先行作がある(極限脱出 9時間9人9の扉・Ever17 -the out of infinity- など)。そうした作品を知っている受け手には、外側の機能を使った謎解きが「位置の反転があるのではないか」という予感を早く与えうる
- 真の結末に至る道が短く、それまでの長い本筋に比べて呆気ないという評がある。反転が明かされた後の物語の量が少ないと、読み直しの楽しみは受け手の側に任されることになる
- 作中の存在の正体(どの陰陽師の精神か)は、作中の人物の系譜や設定の説明に依っている。反転の土台となる設定が多層で、受け手によっては整理しきれない