仕掛けの要約【ネタバレ】
受け手は、自分が操作している人物の役割を誤認する。
本作は、真っ白な部屋に住む少年オモリを操作するところから始まる。オモリは扉を開けて、色鮮やかな夢の世界で仲間たちと冒険し、ゲームの冒頭で姿を消した友人を探すことが旅の目標になる。最初の区画が終わると、この夢の世界は、現実の町で四年間ひきこもってきた少年サニーの夢で、オモリは夢の中での彼の姿だと分かる。以後、夜の夢の世界と昼の現実の町が交互に描かれる。ここまでは作品の前提として受け手に渡され、作り手も早くから二つの世界があることを告げているので、仕掛けには数えない。
受け手はその後も、オモリを、夢の主の分身として仲間を率い、消えた友人を探す主人公として操作し続ける。操作している人物が物語の味方であることを、受け手は疑わない。
終盤、オモリは夢の主を守る側ではなく、夢の主が向き合うべき真実を押し込めてきた側だったと分かる。冒頭で友人を夢の世界から消したのも、真実が浮かび上がるたびに夢の世界を作り直してきたのも、夢の底にある暗い空間を支配しているのもオモリで、真の結末へ向かう道では、夢の主が最後に戦う相手になる。受け手がずっと操作してきた人物が、物語の最後の障害だったことになる。
夢の主が押し込めていたのは、四年前の姉の死をめぐる真相である。姉の死について町の人々と仲間が信じている説明は、受け手にも同じ人々の言葉で渡り、真相は夢の主の記憶の回復として明かされる。この部分は作中の人物と同じ経路で受け取る誤認なので、本項目の仕掛けには数えない。
騙しの技術
- 操作させることで、味方だと思わせる。 RPGでは、受け手が操作する人物が物語を前に進める主人公である。オモリは一言も話さない操作人物として置かれるので、受け手は自分の手でオモリを動かしながら、その行動の意味を疑う立場に立たない
- 探す側に立たせる。 冒頭で友人が消えると、受け手は仲間とともにその友人を探す旅に出る。探している当人が消した側だとは、探す旅の目標そのものが考えさせない
- 夢の世界の明るさを前に出す。 夢の世界は子どもじみた冒険と冗談に満ちていて、恐ろしいものは突然現れては消え、すぐにもとの冒険へ戻される。受け手は恐ろしいものを夢の世界に入り込む異物と受け取り、夢の世界そのものと、その中心にいるオモリが真実を遠ざけているとは考えない
フェアプレイの担保
- 序盤、真実に近づいた友人が夢の世界から消されることは、冒頭の場面として受け手にも見せられている。真相のあとでは、その場面が、誰が友人を遠ざけたのかを示していたと読める、という指摘がある
- 戦闘の感情の表現で、操作できる仲間は二段階までだが、オモリだけが敵の大物と同じ三段階を持つ。オモリだけが、他の仲間と違う扱いを受けているという指摘がある
- 夢の底の暗い空間では、そこに住む者たちが、オモリについて警告する言葉を向ける。オモリが見かけどおりの存在ではないことが、ここで言葉で示される
- 現実の町で夢の主に名前を付ける画面では、他の仲間の名前と並んで、オモリという名前も付けられない。夢の主とオモリが別のものとして扱われていることが、ゲームの仕組みの側に表れているという指摘がある
効き目
- 受け手は、自分が操作してきた人物と対峙させられる。誤認していたのは物語の誰かではなく、自分が手にしていた人物だったことになり、遊んできた時間そのものが読み替えられる
- 明るい冒険として遊んだ夢の世界の場面が、真実を遠ざけるための仕組みとして読み直される。とくに、友人を探す旅が、遠ざけた側の手で続けられていたことが後から重くなる
- 伏線の多くは、見えるところに置かれた小さな違和感で、真相を知って遊び直すと台詞や配置の意味が変わる。読み替えを楽しむために再び遊ぶ受け手が多いと評される
弱点・破綻しやすい点
- 隠された真実があることは、作り手が最初から告げている。 資金募集のページとストアの紹介文が、二つの世界と、忘れられた過去を明らかにする物語であることを予告している。心理ホラーとして身構えた受け手は、夢の世界の中心にいる人物を早くから疑いやすい
- 真相は、作中の言葉と出来事で明かされる。 オモリの役割は、夢の底の住人たちの言葉や、玉座に座る場面、最後の戦いで示される。受け手が自分で組み立てるより、作中で告げられる比重が大きく、どんでん返しとして受け取られやすい
- 伏線が象徴に寄っている。 階段・縄・花の喩えといった手がかりは、夢の論理の中に置かれているので、どれが伏線でどれが夢の飾りかの区別がつきにくい。初回に見落とされやすく、遊び直しを前提にした作りになっている
- 分岐によって効き方が変わる。 現実の町に出ずに夢の世界にとどまる道を選ぶと、夢の主がオモリと最後に戦う結末にはたどり着かない。この仕掛けは主に、真の結末へ向かう道で効く
- 長さ。 夢の世界の冒険は長く、仕掛けに関わらない寄り道も多い。真相に至るまでの間に、手がかりの記憶が薄れやすい