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螺旋の底

深木章子 / 2013 / 小説

読者が誤認するもの

時間›時系列の誤認›並行
人物›人物の誤認›複数を一人
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層メタ
叙述N-時間の並行N-人物の同一と別
媒体固有T-小説/章題と目次T-小説/一人称の空白
効果E-同時に描かれる二つの場面は同じ時刻であるE-章題は物語上の位置を示すE-呼称は語り手との関係を示す

⚠️ このページは作品の核心(真相)に触れます。未読・未視聴の場合はご注意ください。

まだ読んでいない方へ。この下は真相に触れます。

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仕掛けの要約【ネタバレ】

北フランスの村の旧領主の館に、当主が若い妻を連れて戻ってくる。作中の説明では、当主は交通事故でただ一人生き残り、その治療にあたったセラピストと再婚したばかりである。物語は、新妻の「私」と当主の「僕」が一人称で交互に語る形で進み、章の題は月日と曜日だけで示される。

読者は二つの語りを、同じ冬に同じ館で暮らし始めた一組の夫婦の、互いの側から見た記録として読む。日付は章ごとに続いて見え、夫の章に出てくる妻を、妻の章の語り手と同じ女性だと受け取る。

実際には、二つの語りは同じ時期のものではない。夫の章は、事故と再婚より前の時期の出来事であり、そこに出てくる妻は、妻の章の語り手とは別の女性である。読者は、時期の違う二つの流れを一つの時期に重ね、その結果として二人の妻を一人の新妻に合成していたことになる。

館の地下に封じられた過去や、夫が抱える秘密、妻の目的は、物語の中で順に明かされていく。

騙しの技術

  • 章の題に年を書かない。 月日と曜日だけを章の題に置くと、読者は前の章から日付が続いていると読む。二つの流れの日付は、年を除けば自然に繋がって見える
  • 二人の語り手を夫婦として交互に並べる。 妻の章と夫の章が交代で置かれ、どちらも館での新しい結婚生活を語るため、読者は同じ夫婦の両面だと受け取る
  • 妻の章で語り手の名を出さない。 一人称の語り手は自分の名を名乗らなくても不自然ではなく、夫婦は愛称で呼び合う。そのうえで夫の章では妻が名前で呼ばれるので、読者はそれを語り手の名だと受け取る
  • 同じ館と同じ当主を両方の流れに置く。 舞台と夫が共通しているため、語りの時期が違うことを示す目印が目立たない

フェアプレイの担保

  • 章の題の曜日は、作中の年として示される年の暦と合わない章がある。作中では冬季五輪に沸く場面などで年が分かるようになっており、暦を確かめた読者は、時期がずれていることに気づける
  • 妻の章では語り手の名が会話に出ないのに、夫の章に移ると妻の名がはっきり書かれる。この落差に違和感を覚えたという読者が複数いる
  • 章の題が日付だけであることから、時期が違うのではないかと予想できたという読者もいる

効き目

  • 真相が明かされると、夫の章と妻の章の関係が全体にわたって組み変わる。再読して確かめたくなるという反応が多い
  • 結末の章の手前で一度読者を混乱させ、その後の章で仕掛けを解く構成になっており、混乱が解ける瞬間に驚きが集まる
  • 地下室の秘密、夫の秘密、妻の目的という、作中で追われる謎が前面に出ているため、読者の注意はそちらに向き、語りの時期そのものは問われにくい
  • 仕掛けの型自体は珍しくないが、それでも気づかなかったという評が多い

弱点・破綻しやすい点

  • 二人の一人称が交互に語る形式を見た時点で、叙述の仕掛けを予想して読む読者がいる。予想して読むと驚きが小さかったという評がある
  • 真相の説明が終盤にまとめて置かれ、説明的すぎるという不満がある
  • 夫の側の行動の理由が分かりにくく、収まりが悪いという指摘がある
  • 館の地下と螺旋階段の構造が思い描きにくく、作中の殺人の状況が分かりにくいという声がある

読み返してみませんか。

仕掛けを知ってから読むと、同じ記述が別の意味で通ります。

関連する型交換殺人には向かない夜コッペリア修羅の終わり殺戮にいたる病

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