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シャドウ

道尾秀介 / 2006 / 小説

読者が誤認するもの

人物›人物の属性›立場
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層メタ
叙述N-人物の属性
効果E-所属と身辺は人物の属性を示す

⚠️ このページは作品の核心(真相)に触れます。未読・未視聴の場合はご注意ください。

まだ読んでいない方へ。この下は真相に触れます。

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仕掛けの要約【ネタバレ】

母を亡くした小学生の少年と、その父を中心に、家族ぐるみで付き合う二つの家族が描かれる。父はある大学病院に勤めており、物語の舞台にはその病院の精神科がたびたび現れる。父は精神医学の議論に加わり、恩師である精神科医とも親しく、診察室にも出入りする。読者はこれらの描写から、父を精神科の医師(あるいはそれに準ずる専門職)として受け取る。

実際には、父は医師ではない。かつて精神医学の道を志しながら断念しており、現在その病院で働いているのは清掃の仕事である。作中の人物たちは最初からこのことを知っている。知らなかったのは読者だけである。

騙しの技術

  • 職業を一度も明言しない。 父について書かれるのは「大学病院に勤務している」という事実であり、何の仕事で勤務しているかは書かれない。この文は医師としての勤務にも、清掃員としての勤務にも、同じように成り立つ
  • 職場での動作を、職種の分からない形で書く。 診察室の机の下の埃に目を留めて掃き集める、といった場面は、医師が身の回りを片づけている描写としても読め、清掃の仕事そのものとしても読める
  • 精神医学の話題と人間関係で周囲を固める。 精神科の恩師、精神医学の研究に携わる親友、専門的な議論の場面が積み重ねられる。いずれも過去の経緯や交友として事実であり、嘘は含まれていない。読者はそこから職業を補完する
  • 多視点で、誰に何を語らせないかを制御する。 物語は節ごとに視点人物を替えて進むが、父の職業を知っている人物たちはそれを当然のこととして口にしない。知っている者が語らないので、読者の補完は訂正されないまま残る

フェアプレイの担保

  • 父の職業について、偽の記述は置かれていない。勤務先と職場での動作だけが書かれ、読者の補完が誤りの源になっている
  • 父が医者らしい発言をすると、息子や恩師が戸惑う様子が描かれており、伏線として指摘されている
  • 二重三重の解釈ができる言い回しでミスリードを誘っている、と評する読者がいる一方、職業について「確たる描写はなかった」と振り返る読者もいる。後者は、明言がないこと自体が手がかりだったことを示している

効き目

  • 仕掛けの存在を予期させる要素が少ない。舞台が精神科の病院で、親友も恩師も精神医学の専門家であるため、主人公の父がその一員であることは、問う必要のない前提として読み流される
  • 作中では他の驚きも次々に起きるため、この前提が崩れることは、それまでの多くの場面の意味を一度に変える

弱点・破綻しやすい点

  • 職業の明言を避ける書き方は、注意深い読者には不自然な空白として映りうる。実際に「確たる描写がない」と気づいた読者がいる
  • 作中には幻覚の描写など、重要に見えて本筋とほとんど関係しない要素もあり、ミスディレクションの多さが混沌とした印象を与えるという評もある
  • 細部の整合性(終盤のある場面の状況)について疑問を呈する読者の質問が見られる

読み返してみませんか。

仕掛けを知ってから読むと、同じ記述が別の意味で通ります。

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