仕掛けの要約【ネタバレ】
一冊の本に、三つの小説が入っている。
- 前から読むと、一つ目の小説が始まる
- 本を180度ひっくり返して裏から読むと、二つ目の小説が始まる
- 二つの小説の終わりが出会う真ん中に、袋とじで三つ目が封じられている
表題作は、その袋とじの中にある。
読者は本を一方向に読むものとして扱う。
その前提が、物理的に裏切られている。
二つの小説は互いに関係しており、
現実と妄想と時系列が混ざり合う形で提示される。
騙しの技術
本の向きを使う。
紙の本は、上下も前後も物理的に決まっている。
読者はその決まりを疑わない。
→ ひっくり返すという操作が、読書行為そのものに組み込まれている。
終わり同士を出会わせる。
二つの物語が、それぞれの終端で向かい合っている。
その接点に第三の物語が置かれている——
配置そのものが構造を語っている。
袋とじで封じる。
真ん中の小説は、物理的に切らなければ読めない。
読者は「切る」という不可逆な行為を経て、最後の層に入る。
→ 読む順序が、物理によって強制されている。
読む順序を指定する。
「一つ目 → 二つ目 → 袋とじ」の順が推奨されている。
指定があるということは、別の順で読むことも可能ということである。
→ 順序が読者に委ねられている部分がある。
フェアプレイの担保
- 三つの小説の存在は、本を手に取れば物理的に分かる
- 読む順序は明示されている
- ⚠️ ただし電子書籍では、この構成の大半が失われる
効き目
- 「本を裏返す」という身体的な行為が、そのまま作品体験になっている
- 袋とじを切る行為が、最後の層に入る儀式として働く
- シリーズ三作目であるため、前二作を読んだ読者の身構えを前提にできる
弱点・破綻しやすい点
- 電子書籍で成立しない。 物理の本でしか体験できない
- シリーズ前二作を読んでいないと効果が落ちるという指摘が複数ある
- 「叙述ミステリを読み慣れていない読者には伝わらない」という評がある
→ 観察メモ★21(効き目は受け手の状態で決まる)の実例
- 現実と妄想が混ざるため、整理しきれないという読者が多い