仕掛けの要約【ネタバレ】
小説の原稿が盗まれ、盗作された作品が新人賞を受賞する——という筋を、読者は追う。
その過程で読者は、誰が盗まれた側で誰が盗んだ側かを取り違え、
さらに別人である二人を同一人物として読む。
そして最大の仕掛けは、地の文だと思って読んでいた部分が、 作中の誰かが書いた作品や日記だったという階層構造にある。
入れ子は一重ではなく、最も外側には作者自身が現れる。
騙しの技術
地の文と作中作の境目を示さない。
本文として読み始めた記述が、実は作中人物の書いたものだった、という構造。
どこからどこまでが誰の書いたものかを明示しないことで、
読者は階層を意識せずに「本文」として受け取る。
入れ子を重ねる。
作中作の中にさらに作中作があり、最も外側には現実の作者が置かれる。
どの層の話をしているのかが、読者の側で確定できない状態が保たれる。
立場を反転させる。
被害者に見える人物と加害者に見える人物の関係が入れ替わる。
盗まれた側だと思って読んでいた人物が、先に盗んでいた。
フェアプレイの担保
- 人物の言動に不自然さが置かれており、同一人物として読むには無理がある手がかりが与えられている
- 階層構造は最終的に整合的に説明される
- 作者自身が最も外側に現れることは、あとがきという形式で明示される
効き目
- 「本文とは何か」という前提を崩すため、仕掛けが物語の内側で完結しない
- 立場の反転と階層の反転が二重に効く
- 殺人が起きるにもかかわらず喜劇的な調子が保たれ、その距離感が構造の露出を助けている
弱点・破綻しやすい点
- 入れ子が深いため、構造を把握しそこねると何も残らない
- 登場人物が構造のための駒として扱われており、人物への感情移入は薄い
(これは意図的な選択だという評価もある)
- 「実は語り手が正常でなかった」という処理が併用されており、賛否が分かれる