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異人たちの館

折原一 / 1993 / 小説

読者が誤認するもの

人物›人物の隠匿›視点人物の隠匿
体裁›入れ子›作中作
時間›時系列の誤認›順序
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層複合
叙述N-語り手の正体N-語りの階層N-時間の順序
媒体固有T-小説/記録という体裁T-小説/組版と書式T-小説/一人称の空白
効果E-語り手は名前で示された人物E-挿入される断章は本編と対応している

⚠️ このページは作品の核心(真相)に触れます。未読・未視聴の場合はご注意ください。

まだ読んでいない方へ。この下は真相に触れます。

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仕掛けの要約【ネタバレ】

本編の合間に、計10回、独白が挿入される。

本編は、失踪した天才少年の伝記を書くために、

作家志望の男が資料を読み、関係者に取材していく話である。

挿入される独白は、樹海での孤独な生活を語っている。

読者はそれを、失踪した少年のものとして読む。

真相——その独白は、伝記を書いている側の男のものだった。

語られている「現在」が、読者の思っている時点ではない。

騙しの技術

本編と断章を交互に置く。

本編が失踪した人物を追っているのだから、

挿入される独白もその人物のものだろう、と読者は自分で結びつける。

作者は結びつけていない。読者が勝手に対応づけている。

名前をひらがなで書く。

独白の中で姓がひらがなで表記される。

漢字なら人物が確定するが、ひらがなでは確定しない。

書かれていないのではなく、確定しない形で書かれている。

文体を大量に並べる。

独白・短編小説・年譜・関係者への聞き取り——

形式が多いほど、それぞれの帰属を追う負担が増える。

読者の注意は「誰が書いたか」ではなく「何が書いてあるか」に向かう。

作中作を挟む。

作中で書かれた小説が本編に混ざることで、

どこまでが作中の現実で、どこからが虚構かの境界が曖昧になる。

実在の事件を思わせる要素を配置する。

過去に起きた事件を思わせる設定を置くことで、

読者は現実の知識を持ち込んで先入観を作る。

フェアプレイの担保

  • 独白の中に、書き手を特定する情報が書かれていない(嘘は書かれていない)
  • ひらがな表記はそのまま提示されている。読者が漢字を補っている
  • 独白の内容には、失踪した人物のものとしては不自然な箇所が置かれている

効き目

  • 「並べられたものを読者が勝手に対応づける」型の典型例
  • 形式の多さそのものが、注意を分散させる装置として働いている
  • 分量(600ページ超)が仕掛けを支えている。長さが忘却を生む

弱点・破綻しやすい点

  • 作者の評判が仕掛けの敵になっている。

この作者は叙述トリックの書き手として知られているため、

読者が最初から疑って読む。

ある読者は「純粋に騙されることを楽しめなかった」と書いている

→ 「予告してから使う」型(叙述トリック短編集)とは逆に、 予告するつもりがないのに予告されてしまっている状態

  • ひらがな表記に気づいた読者は、その時点で疑い始める
  • 一部の要素(「異人」の正体・失踪者の生存)は序盤から推測可能という指摘がある

読み返してみませんか。

仕掛けを知ってから読むと、同じ記述が別の意味で通ります。

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