仕掛けの要約【ネタバレ】
作品の中身ではなく、作品の「形式」そのものを擬態した例。
小説を原作とするラジオドラマだが、前半が音楽番組の放送として始まる。
そこへ「番組を中断して臨時ニュースをお伝えします」という形で速報が割り込み、
天体の異変、落下物、そこから現れたものによる被害が、
実況・現地レポート・専門家の解説という報道の形式で次々に伝えられていく。
聴取者が誤認するのは物語の内容ではない。
いま自分が聴いているものが、作品なのか現実の報道なのかである。
これは「叙述の中の仕掛け」ではなく、「媒体の形式の擬態」による仕掛けである。
ドラマであることは冒頭で告げられており、嘘はついていない。
聴き始めが遅れた者、あるいは途中で切り替えた者にとって、
その断りは存在しないのと同じになる。
騙しの技術
その媒体で「現実」を運ぶ形式を、そのまま借りる。
ラジオにおいて臨時ニュースは、作品ではなく現実を運ぶための形式である。
その形式を使えば、内容がどれほど荒唐無稽でも、受け取り方だけが現実側に寄る。
通常の番組から始めて、割り込ませる。
最初から異常な内容を流すのではなく、平常の放送を演じてから中断する。
「中断された」という事実自体が、緊急性の証拠として働く。
時間の進行を実時間に近づける。
出来事が今まさに進行しているかのように構成される。
受け手が確認する余裕を与えない。
断りを、聴かれない位置に置く。
ドラマであるという告知は冒頭にある。
放送は途中から聴かれうる——この媒体の性質上、断りは全員には届かない。
フェアプレイの担保
- 冒頭で原作つきのドラマであることが明示されている。虚偽の告知はない
- 放送中にも複数回、ドラマである旨の断りが入れられた
- 内容自体は原作のある創作であり、事実として提示されたものではない
効き目
- 形式の擬態だけで、内容の荒唐無稽さを押し切っている
- 受け手が「作品を受け取る態度」から「現実の情報を受け取る態度」に切り替わる
- 放送という媒体の性質(途中から受信されうる)が、そのまま仕掛けの一部になっている
弱点・破綻しやすい点
- この型は一度しか使えない。 以後、同じ形式の擬態は警戒される
- 受け手の側に実害が及びうる。倫理的な批判を招く型である
- 現在の放送・配信では規制や運用上の制約があり、同じことは実行しにくい