仕掛けの要約【ネタバレ】
「並んでいる順に読む」という、あらゆる物語の基本を外した構成。
登場人物は一定時間ごとに眠らされ、記憶を消される。
そのため物語は記憶の残らない短い断片の集まりとして提示され、
プレイヤーはその断片を好きな順序で体験する。
読者は通常、提示された順序を時間の順序として受け取る。
本作はそれを最初から放棄させ、順序をプレイヤーの手に委ねる。
結果として、どの断片がどの時点のものかが最後まで確定しない状態が続く。
さらに、断片によっては別の断片で生きているはずの人物が死んでいるといった矛盾が生じる。
これは不備ではなく、複数の並行する経過が同時に提示されていることの現れである。
加えて、存在そのものが伏せられている人物がいる。
視点となる人物の知覚が限られている状況が用意されており、
その人物の感覚に映らないものは、プレイヤーにも提示されない。
騙しの技術
順序をプレイヤーに選ばせることで、順序の意味を消す。
自分で選んだ順序である以上、プレイヤーはそれを作品が主張する時系列とは考えない。
順序という手がかりが最初から無効化される。
記憶が残らないという設定で、断片の孤立を正当化する。
人物が前の出来事を覚えていないため、断片同士が繋がらないことが不自然に見えない。
矛盾をそのまま提示する。
辻褄が合わない箇所が残されるが、プレイヤーは
それを不備と見るか仕掛けと見るか判断できない状態に置かれる。
視点人物の知覚の限界を、画面の限界として使う。
見えない・聞こえないという条件が用意された場面では、
その人物に届かない情報はプレイヤーにも届かない。
ゲームでは画面に映るものが世界のすべてであるため、存在が伏せられる。
フェアプレイの担保
- 記憶が消されるという設定は最初に明示されている
- 断片を自由に選べることは、システムとして提示されている
- 矛盾は最終的に説明される構造になっている
効き目
- 順序という最も基本的な手がかりを、プレイヤー自身に放棄させる
- 断片形式が、記憶を失う登場人物の体験とプレイヤーの体験を一致させている
- シリーズ三作の中で、時間の扱いを最も前面に出した構成になっている
弱点・破綻しやすい点
- 「仕掛けが物語を畳む方向に働いていて楽しくない」という批判がある。
シリーズの完結作として、仕掛けが伏線回収の作業になってしまったという評価
- 断片形式は把握の負担が大きく、全体像を持てないまま進む時間が長い
- 矛盾を残す手法は、前作までを知らない読者には不備として映る