仕掛けの要約【ネタバレ】
章が二系統に分かれ、交互に語られる。
一方は連続する幼女誘拐事件の捜査、もう一方は娘を失って新興宗教にのめり込む男の話。
読者はこの二つが同時期に進行している別々の人物の物語として読む。
実際には時期がずれており、二人は同一人物である。
捜査する側だった人物が、その後に別の姓を名乗り、もう一方の章の人物になっている。
騙しの技術
姓が変わることを、姓の違いとして読ませる。
同一人物が事情により別の姓を名乗る。どちらの姓も本人のものだが、
読者は姓の違いを人物の違いとして処理する。
交互配置で同時進行を暗示する。
章を交互に置くことで、二つの物語が並走しているという印象が作られる。
実際には片方が他方より後の時期にある。
犯人像を重ねて見せる。
宗教にのめり込む男の姿が、捜査側が追う犯人像と重なるように書かれる。
読者は「この男が犯人ではないか」という別の推理に誘導され、
二人が同一人物である可能性そのものを検討しない。
フェアプレイの担保
- 時系列を判別できる手がかりが本文に置かれている(季節の描写のずれなど)
- 姓の変更には作中で理由が与えられている
- 交互配置は形式であって、同時進行だと明言する記述はない
効き目
- 反転が人物の悲劇の全体像を一度に開示する構造になっており、
仕掛けの解決と情緒の頂点が同じ場所にある
- 「犯人は誰か」という推理に読者を誘導し、その推理を当たっているが的外れにする二段構え
- 発表当時としては新しい構成だったと評価されている
弱点・破綻しやすい点
- 交互章+時系列ずらしという型は、以後に広く使われた。現在の読者には早期に気づかれやすい
(「今読むと仕掛けが素直に見える」という指摘がある)
- 姓の違いという手がかりが目立つため、注意深い読者には早い段階で疑われる
- 二系統の章のうち片方が本筋から浮いて見えるため、その違和感自体がヒントになる