仕掛けの要約【ネタバレ】
退職から12年たった年老いた元警部のもとを、若い女性の警官が訪ねてくる。警官は、元警部が唯一解決できなかった少女の行方不明事件を終わらせたいと頼み、元警部は当時の関係者の証言を思い出していく。プレイヤーは、話し手も時系列もばらばらになった証言の断片を、誰がいつ言ったものかを推理して並べ直し、事件の真相に迫る。
証言を組み終えると、事件の全体が見えてくる。同じ名前を持つ少女が二人いて、一人は乳児のうちに亡くなっていたこと。その子の母親が娘の死を受け入れられず、同じ名前の別の少女を自分の娘と思い込んで連れ去ったこと。周囲の人々が母親をかばって嘘を重ね、事件が未解決のまま残されたこと。ここで一度目の結末が来て、訪ねてきた警官が、かつて連れ去られて助け出された少女の成長した姿だったと明かされる。
真相は、もう一段先の結末で明かされる。プレイヤーが元警部だと思って見てきた老女は元警部ではなく、少女を連れ去った母親その人だった。母親は心を病んだまま、自分を事件を担当した元警部だと思い込んでいる。思い出していた証言は、事件を起こした当人の頭の中にあったものになる。訪ねてきた警官が何者かについては、本物の元警部だとする読みが多いが、成長した少女だとする読みもある。
騙しの技術
- 老女自身が、自分を元警部だと思い込んでいる。 老女は元警部として事件を振り返り、担当した捜査の悔いを語る。本人が自分の正体を取り違えているので、語りに意図的な嘘がなくても、受け手は語りの主を元警部として受け取る
- 訪問者が、その思い込みに合わせて話す。 訪ねてきた警官は老女を元警部として扱い、事件を思い出すよう促す。作中で唯一事情を知っている人物が話を合わせるので、老女の自己認識を外から崩すものがない
- 証言の謎解きを前面に出す。 プレイヤーの作業は、話し手の伏せられた証言の持ち主と順番を当てることにある。謎はすべて過去の事件の側に置かれ、いま事件を思い出している人物が誰かという問いは立たない
- 偽の解決を一度出す。 証言を組み終えると、訪問者の正体を明かす結末が来て、物語が閉じたように見える。この結末は老女を元警部とみなしたまま成り立つので、枠の前提を補強する。真相の結末は、証言の中の手がかりを集めきらないと開かない
フェアプレイの担保
- 事件当時の元警部は、証言の中ではてきぱきとした人物として現れる。その姿と、いまの弱りきった老女の姿とが食い違っていて、不自然に感じたという受け手がいる
- 証言から見えてくる事件の顛末では、担当した警部がこれほど思い悩む理由が見当たらない。受け手の中には、一度目の結末を見た段階でそこに疑問を持った者がいる
- 老女と訪問者のやりとりには、同じ話をこれまで何度もしてきたことをうかがわせる台詞があり、二つの結末が一続きの状況だと読める
効き目
- 証言の並べ替えで過去の事件を解き終えた後に、枠そのものが反転する。プレイヤーが寄り添ってきた「事件を終わらせたい元警部」が、事件を起こした当人だったと分かり、思い出されてきた証言の束の持ち主が変わる
- 題名の意味が、一度目の結末とは別の形で回収される。終わらせなければならないのは警察の記録の上の事件ではなく、母親の中でいまも続いている事件だった、と読めるようになる
- 一度目の結末が感動的にまとまっているので、そこで遊び終えた受け手には反転が届かない。その手前で満足させておくことが、二段目の衝撃を大きくしている
弱点・破綻しやすい点
- 真相は、手がかりを集めきった場合にだけ開く結末で示される。一度目の結末で終えた受け手は、枠の仕掛けに気づかないまま遊び終えうる。分岐の条件が分かりにくく、攻略情報で初めて気づいたという受け手もいる
- 訪問者が何者かは、結末の読み方によって分かれる。本物の元警部が話を合わせていると読む受け手が多いが、成長した少女が元警部を名乗っていると読む受け手もいる。仕掛けの片方の端が定まらない
- 証言の謎解き自体が難しく、最後は総当たりで並べたという受け手もいる。操作の仕組みが分かりにくいという評もある