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終りなき夜に生れつく

アガサ・クリスティ / 1967 / 小説

読者が誤認するもの

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層メタ
叙述N-語り手の正体
媒体固有T-小説/記録という体裁T-小説/一人称の空白T-共通/語り手の信頼性
効果E-語り手は正直E-犯人の内心は描かれない

⚠️ このページは作品の核心(真相)に触れます。未読・未視聴の場合はご注意ください。

まだ読んでいない方へ。この下は真相に触れます。

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仕掛けの要約【ネタバレ】

一人称の語り手は、職を転々としてきた若い男である。彼は呪いの言い伝えがある土地で資産家の娘と出会い、結婚し、そこに家を建てる。妻の付き添い役の女性には反感を抱き、妻の親族の目も冷たい。やがて妻は森で死に、言い伝えの影がその死に重なる。読者はこれを、ひとりの若者が恋と喪失を振り返る物語として読む。

終盤で、語り手が妻を殺した犯人であることが明かされる。付き添い役の女性は、語り手が妻と出会う前からの恋人であり、二人は最初から財産を目当てに殺害を計画していた。語り手が描いてきた反目は、周囲に二人の関係を悟らせないための芝居だった。本文全体は、すべてが終わり、語り手が捕らえられたあとで彼自身が書いた記録である。

騙しの技術

  • 本文が語り手の書いた記録である。 回想の形をとり、何かが取り返しのつかない形で終わったあとから書かれていることは早くからほのめかされる。しかし、終わったのが何だったのかは伏せられ、読者はそれを喪失の悲しみとして受け取る
  • 感情を細かく書く。 語り手は妻への想いも、周囲への苛立ちも、自分の言葉で詳しく語る。内面が描かれる人物を受け手は犯人の候補から外しやすく、その前提がそのまま使われている
  • 共犯者との関係を逆向きに書く。 語り手は付き添い役の女性に反感を示し、彼女とは面識がなかったように書く。二人が無関係で、むしろ対立していると読ませることで、共謀の可能性そのものが問いに上らない
  • 省略にとどまらない可能性がある。 語り手の記述には、書かないことによる誘導に加え、事実と異なることを述べる箇所が含まれると読む読者がいる。そう読むなら、記録の書き手は何を書いて何を書かないかを選ぶだけでなく、自分に都合のよい像を積極的に作っていることになる
  • 型としては アクロイド殺し と同じ「語り手が犯人」である。 ただし アクロイド殺し が事件の記録という形をとるのに対し、本作は恋愛と家の物語として進み、事件が起きるまでが長い。語り手は事件の観察者の位置ではなく、物語の主人公の位置に置かれている

フェアプレイの担保

  • 語り手が過去を振り返って書いていること、その結末が不幸なものであることは、最初から示されている
  • 語り手の母親が息子を信用しておらず、語り手が妻を母親から遠ざけようとすることは、真相を知ってから読み返すと手がかりとして働くと複数の読者が指摘している
  • 読み終えてから伏線の多さに気づき、読み返したくなったという反応が多い
  • 一方で、語り手が事実と異なることを読者に告げていると受け取り、手がかりを信頼して読むことができないので公正さを欠く、と感じる読者もいる

効き目

  • 真相が明かされると、恋と喪失の物語として読んできた全体が、殺人者の内側から見た世界として読み直される。読者は気づかないうちに、語り手の目で人物たちを見て、語り手に同情していたことになる
  • 犯人の側にいる語り手の心理を、隠したまま最後まで読ませる点に、この作品の怖さがあると評されている
  • 結末は唐突な種明かしではなく、語り手の内面が崩れていく過程として描かれ、驚きと恐ろしさが同時に来るという反応が多い

弱点・破綻しやすい点

  • 同じ作者が同じ型を使っていることが広く知られている。 アクロイド殺し を知っている読者は、一人称の語り手を最初から疑って読む。結末が予想できたという感想が少なくなく、先行作を知っていたので疑って読んだという感想もある
  • 全体の3分の2ほどまで大きな事件が起きず、何のジャンルの話なのかも分からないまま進む、という感想が多い。恋愛の物語に乗りきれずに途中でやめたという読者もいる
  • 語り手に意図的にだまされていたと分かったとき、不快感が驚きを上回ったという読者がいる。語り手が事実と異なることを述べていると読む読者からは、手がかりがすべて誤導だったという不満も出ている。省略を軸にした アクロイド殺し と比べ、フェアかどうかの評価が割れやすい可能性がある

読み返してみませんか。

仕掛けを知ってから読むと、同じ記述が別の意味で通ります。

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