仕掛けの要約【ネタバレ】
手記の書き手として事件を語る人物が、犯人である。
それに加えて、首のない死体による被害者の取り違えと、
夢遊病という身体的条件を伏せることによるアリバイの操作が重ねられている。
読者への仕掛けと、作中人物を欺く仕掛けが同時に走っている。
騙しの技術
手記という形式で、語り手を安全圏に置く。
事件を記録する立場の人物は、疑いの対象から外れる。
書き手には省略の権利があるという性質が、ここでも働く。
登場人物の身体的条件を伏せる。
ある人物が夢遊の症状を持つという事実が読者に示されない。
この一点が伏せられているために、その人物の行動の意味がすべてずれる。
首のない死体で、誰が死んだのかを不確定にする。
身元を確定できない死体を置くことで、生死と人物の対応が入れ替わる。
これは作中人物を欺く古典的な手口だが、読者にも同時に効く。
フェアプレイの担保
- 手記の中に虚偽の記述はなく、省略と配列で誘導が行われる
- 伏せられている身体的条件については、気づける手がかりが配置されているという評価がある
- 遺留品や現場の痕跡といった物証が提示され、探偵役の推理で回収される
効き目
- 読者向けの叙述と、作中人物向けの物理トリックが同じ方向に働く。
どちらか一方が破れても、もう一方が誤読を支える構造になっている
- 短い分量に複数の趣向が詰め込まれており、密度が高い
- 語り手=犯人という型を、日本の作品に持ち込んだ例として位置づけられている
弱点・破綻しやすい点
- 語り手=犯人という型が既知である以上、手記形式そのものが警戒される
- 首なし死体は、身元確認の手段が発達した現代では成立しにくい
- 登場人物の造形が意図的に不快に書かれており、これが好みを分ける
(心理的な不自然さを目立たなくする機能も兼ねているという指摘がある)