一覧 / フーダニット・クインテット

フーダニット・クインテット

円居挽 / 2018 / 小説

読者が誤認するもの

人物›人物の隠匿›視点人物の隠匿
詳しい分類を見る
層複合
叙述N-語り手の正体N-人物の属性N-動機と心理
媒体固有T-小説/一人称の空白T-共通/予告と挑戦T-共通/囮の仕掛け
効果E-語り手は物語の外にいるE-画面に出ない人物はその場にいないE-プレイヤー=主人公E-探偵は物語の外にいる
手段M-隠蔽と隠し場所M-心理誘導

⚠️ このページは作品の核心(真相)に触れます。未読・未視聴の場合はご注意ください。

まだ読んでいない方へ。この下は真相に触れます。

先に作品にあたるなら、こちらから。

PR:本ページはアフィリエイト広告を含みます。

ミステリは“聴いて”楽しむこともできます(Audible 30日間無料体験)

仕掛けの要約【ネタバレ】

短編集『語り屋カタリの推理講戯』の収録作。

作中で行われているのは、ゲームの中の殺人事件を推理するという趣向である。

語り手役の人物が、犯人当ての講義をしながら進む。

二重になっている

① 作中の謎——カメラマンが犯人

容疑者は一旦「プレイヤー」に限定される。

だがそれは真犯人を隠すミスディレクションだった。

プレイヤーが全員除外されたあと、

「見えない人」としてのカメラマンが犯人だと指摘される。

② 読者への仕掛け——語り手が隠されている

地の文から一人称の代名詞が徹底して省かれている。

→ 一人称の叙述が、三人称に見える。

そして冒頭の描写で、カメラマンの存在がかすかに匂わされている。

そして構図が反転する

ここまでは、先行する〈カメラマンの隠匿〉と同じである。

本作の見どころは、その先にある。

最後に問われるのは——「そのカメラマンは、なぜ殺されたのか」。

→ 「カメラマンが犯人」から「カメラマンが被害者」へ、構図が反転する。

しかも、犯行の動機が仕掛けそのものである。

カメラマンは他のプレイヤーにとって盲点になる——

犯人は、その立場を手に入れるために、本物のカメラマンを殺した。

→ 「見えない人」であることに、作中での必然性が与えられている。

ひとことで言えば

視点人物がたまたま犯人だったのではない。犯人のほうが、視点人物の位置に自分から入り込んだのである。

騙しの技術

一人称の代名詞を、地の文から省く。

日本語は主語を省略できる。

→ 一人称と三人称の区別がつかない文が書ける。

存在をかすかに匂わせておく。

冒頭でカメラマンの気配を残す。

→ 隠し通していない。手がかりは置かれている。

属性で容疑者を絞らせ、その絞り込みを囮にする。

作中の講義で「犯人当てでは属性が重要だ」と説かれる。

→ 読者は属性で容疑者を限定する。

その限定そのものが、真犯人を外に出す装置である。

講義の中に、ヒントを置く。

犯人は自分の属性を偽ってくるものだ、ゲームの参加者に別人がなりすましていてもおかしくない、という趣旨の話が講義の中で出てくる。

→ 答えが講義として語られている。

読者は「作品世界のルール説明」として読み流す。

(観察メモ★2・探偵映画 と同じ設計)

慣れた受け手ほど気づきにくくする。

ゲームに慣れたプレイヤーほど、カメラマンを意識から外す。

→ 初心者のほうが正解しやすい構造になっている。

(観察メモ★45「外側の知識は油断も生む」の実例)

フェアプレイの担保

  • 冒頭でカメラマンの存在が匂わされている
  • 講義の中に、答えにつながる原則が語られている
  • 死体を発見した人物の行動が、手がかりとして機能している

効き目

  • 前例と同じ型を使いながら、構図を反転させている
  • 「見えない人」であることに、作中での意味が与えられている

→ 前例では「読者から隠されている」以上の意味がなかった

  • ゲームという舞台が、属性による絞り込みを自然にしている

弱点・破綻しやすい点

  • 型としては前例が複数ある
  • ゲームのルール説明が多く、そこで離脱する読者が出うる

読み返してみませんか。

仕掛けを知ってから読むと、同じ記述が別の意味で通ります。

関連する型どんどん橋落ちた愚者のエンドロールスラッシャー廃園の殺人極限脱出999

← 一覧に戻る