類別叙述トリック集成

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スラッシャー 廃園の殺人

三津田信三 / 2007

ネタバレ度:致命
複合
叙述N-語り手の正体N-語りの階層N-時代と時期N-内心の帰属
媒体固有T-小説/一人称の空白T-小説/記録という体裁T-小説/章題と目次T-共通/囮の仕掛け
効果E-語り手は物語の外にいるE-画面に出ない人物はその場にいないE-映っているものは起きたことE-作品と現実は区別できるE-探偵は物語の外にいる
手段M-隠蔽と隠し場所M-心理誘導
媒体小説

⚠️ このページは作品の核心(真相)に触れます。未読・未視聴の場合はご注意ください。

まだ読んでいない方へ。この下は真相に触れます。

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仕掛けの要約【ネタバレ】

廃墟庭園に、ホラービデオのロケハンで一行が入る。

正体不明の影に、一人ずつ殺されていく。

読者はこれを、その場で起きている出来事の描写として読む。

真相——本編は、撮影された映像である。

撮影しているカメラマンの存在が、読者から隠されている。

カメラのフレームに収まらない部分が、そのまま盲点になる。

そしてそのカメラマンが、犯人である。

単なる撮影者ではなく、この映画の監督でもある。

### 二重の隠匿になっている

先行研究は、隠匿が二段構えだと分析している:

| 層 | 隠されているもの |

|---|---|

| ①撮影の層 | 映像を撮っているカメラマンが、画面に映らない |

| ②鑑賞の層 | その映像を見ながら描写している人物が、隠されている |

②は「一人称を三人称に偽装する」型である。

そして①と②は、同一人物である。

この解釈を支えるのが、次の一文である:

「そう説明するとは、これまで撮影を続けていたカメラを止めた。」

撮影された映像を描写する文章に、 カメラマンが「私」として現れることは通常あり得ない。

映像を鑑賞している当人が、 画面に映らない事情を撮影者の立場から補足している、と読める。

騙しの技術

前例が用意していた担保を、あえて外す。

先行研究によれば、この型には国内に2つの前例がある。

前例はどちらも、外枠の物語の中で映像を「作中作」として提示している。

読者は「これは撮影された映像だ」と最初から知らされる。

それによってフェアネスが担保されていた。

本作は、それをしない。

外枠にあたる部分は、真相が明かされた後の「幕間」しかない。

本編が映像なのか、目前の現実なのかを、意図的に曖昧にしてある。

前例を知っている読者ほど、 「外枠がないのだから、これは映像ではない」と読む。

先行研究はこれを「前例を逆手に取った仕掛け」と呼んでいる。

同種の囮を、先に置く。

別のスタッフが、メイキング映像の名目ですでにカメラを回している。

「カメラを回している人物」という要素が、 先に、別の人物によって消費されている。

(観察メモ★36「囮は同じ種類であるほど効く」の2例目)

犯人を、堂々と登場させる。

犯人は隠れていない。一行の一員として最初からいる。

「隠された人物がいる」という発想が立たない。

時期を誤認させる。

冒頭に置かれた場面が、数年前の出来事だと読ませる。

章番号を操作する。

冒頭が「32 序幕」で、次が「0 暗黒」。

映画の構成を模した章立てになっている。

映画を「意識した構成」だとは読めるが、 「本編そのものが映像だ」とまでは読ませない。

T-小説/章題と目次

仕掛けの成立に必要な二つの説明を、動機ひとつで解決する。

この型を「実際に起きた事件」でやると、二つの問題が生じる:

1. 犯人であるカメラマンが、なぜ撮影を続けるのか

2. 撮影された映像が、なぜ犯人以外の手に渡っているのか

先行研究は、前例2作が事件を「虚構」にしたのは この二問を避けるためだろう、と述べている。

本作は、スナッフ・フィルムの撮影という動機を置くことで、 両方を一度に解決している。

監督という立場を、犯行の手段にする。

単なる撮影者ではなく監督だからこそ、 一行を誘導してばらばらにできる。

連続殺人が可能になる。立場が動機とも手段とも噛み合っている。

フェアプレイの担保

(真相解明後の「幕間」で説明される)

先行研究は、前例2作がこの明示によってフェアネスを担保していたと述べ、 本作がそれを外していることを「前例を逆手に取った」と評価している。

担保の除去そのものが、仕掛けになっている

効き目

先行研究は「もともとは映画などの分野で発展したアイデア」と述べている。

観察メモ★20(媒体移植)の、逆方向の実例。

これまで集めてきた実例は、小説→映像の向きが主だった

そのぶん、ホラーとしての緊迫が保たれる

ジャンルが枠を決めている

弱点・破綻しやすい点

先行研究:「少なくとも前例を知っている場合には さほどのサプライズが生じない」

観察メモ★21(効き目は作品の外側で決まる)の実例

明示を外したことで、確定的な反転が起きない。

担保を外すと、反転の切れ味も落ちる。代償がある

(別系統)——露骨な説明口調・稚拙に見える表現

観察メモ:TDB-0054と同じ「露骨さ」の問題

前例の存在は、読者の側にも認識されている

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