仕掛けの要約【ネタバレ】
島に伝わる予言のとおり、人が次々に死んでいく。
だが終盤、謎はほとんど解けてしまう。
怪異の正体は現実的な原因であり、犯人も動機も判明する。
そして最後の最後に、新しい謎が出る——「誰が◯◯を殺したのか」。
真相——全編にわたって隠されていた人物が、そこで犯人として現れる。
### 一人称を、三人称に見せかけている
これは〈視点人物の隠匿〉の型である。
だが、前例とは二点で大きく違う。
### 違い①——隠された人物が、隔離されていない
この型では通常、隠された人物を他の登場人物から隔離する。
そうしないと、会話などのやりとりで存在が浮かび上がるからである。
本作の隠された人物は、ほとんど隔離されていない。
- ほぼ一貫して、ある人物と行動を共にしている
- 他の人物と、かなり普通に会話を交わしている
直接言及されないことについては、遠慮のような「心理的な隔離」があるとも言えるが、 前例と比べれば明らかに弱い。
### 違い②——偽装の宛先が違う
前例の大半は、三人称客観視点に偽装している。
内面描写ができないぶん、地の文が薄くなる。
本作は、内面描写のある三人称単視点に偽装している。
→ 同行している人物の視点だと読める。
→ 前例を知っている読者ほど、気づきにくい。
### 違い③——犯行のタイミングが、極端に遅い
隠された人物が犯行に及ぶのは、結末ぎりぎりである。
理由は、隔離されていないことにある。
犯行が起きれば、作中の人物にとって犯人は一目瞭然になってしまう。
少なくとも容疑者として検討せざるを得なくなる。
→ 隔離しない代償を、時間配置で払っている。
騙しの技術
隔離しない。代わりに、寄り添わせる。
隠された人物を、視点人物のように見える人物のそばに置く。
→ 二人が常に一緒にいるので、記述が一人分に見える。
内面描写を残す。
三人称客観に偽装すると、内面が書けなくなる(前例の弱点)。
単視点に偽装すれば、内面を書ける。
→ 地の文が自然になる。
言及されないことに、感情的な理由を与える。
その人物について直接語られないことに、遠慮のような空気が作られている。
謎を先に解ききって、油断させる。
終盤で謎がほとんど解決してしまう。
→ 読者は「もう終わった」と思う。
そこに最後の謎が出る。
怪異を、現実的な原因に着地させる。
超自然の恐怖が、物理的な原因だったと分かる。
→ 合理化が済んだという感覚が、警戒を解く。
フェアプレイの担保
- 隠された人物は、作中に登場し、会話もしている
- ⚠️ 先行研究は、手がかりとされうる箇所を複数検証したうえで、 そのいくつかについて「微妙」「手がかりとはいえない」と評価している
効き目
- 隔離しないという選択が、前例を知る読者を裏切る
- 内面描写があるため、地の文の不自然さが生じない
- 謎が解けきったあとに最後の謎が出る構成が、驚きを最大化している
弱点・破綻しやすい点
- ⚠️ 手がかりの多くが決め手にならないという指摘
- ⚠️ 犯行が結末ぎりぎりに置かれるため、事件としての厚みが薄い
- 隔離が弱いぶん、注意深く読めば存在に気づきうる