仕掛けの要約【ネタバレ】
作中作に、二種類の人称の偽装が同時に仕掛けられている。
| 仕掛け | 内容 |
|---|---|
| 三人称に見せかけた一人称 | 語り手が自分を名乗らず、外から書く |
| 一人称に見せかけた三人称 | 一人称に見える記述が、実は別の人物についてのもの |
この二つを組み合わせることで、ある登場人物の存在が消える。
### 一人称パートの語り手を、別人だと読ませる
一人称パートの語り手は、人称代名詞と紛らわしい名前を持っている。
そのため、名前が出ていても代名詞として読み流される。
### 三人称パートが、誤認を固める
三人称パートで、その人物は属性で言及される。
その属性が、別の登場人物にも当てはまる。
→ 読者は、そちらの人物のことだと読む。
先行研究はこれを「二重の二人一役」と呼んでいる。
### 名前が二つある
隠された人物は、通名を持っている。
本名と通名の二つがあることで、呼称の使い分けが自然に見える。
騙しの技術
人称代名詞と紛らわしい名前をつける。
名前が書いてあっても、読者は代名詞だと処理する。
→ 書いてあるのに読まれない。
二種類の偽装を、逆向きに組み合わせる。
一方は「一人称を三人称に見せる」。
もう一方は「三人称を一人称に見せる」。
→ 両方向から挟むことで、人物の輪郭が消える。
属性で言及して、別人に当てはめさせる。
名前ではなく、立場や関係で呼ぶ。
→ その属性を持つ別の人物がいれば、そちらに吸収される。
通名という制度を使う。
名前が二つあることに、作中の現実的な理由がある。
→ 呼び分けが不自然にならない。
フェアプレイの担保
- 名前は書かれている。読者が代名詞として読み飛ばしているだけ
- 通名の存在は、作中の設定として提示できる範囲にある
- ⚠️ 先行研究は「通名が“奥”だというのはいささかご都合主義」と指摘している
効き目
- 二方向の偽装を組み合わせた例は珍しい
- 人称代名詞と紛らわしい名前という着眼が、日本語に固有の資源になっている
- 通名という制度に目をつけた点を、先行研究は「なかなかうまい」と評している
弱点・破綻しやすい点
- ⚠️ 通名の設定がご都合主義だという指摘
- ⚠️ 一部の台詞が不自然だという指摘
- 名前が代名詞と紛らわしいという仕掛けは、翻訳では成立しない