類別叙述トリック集成

一覧 / 誰のための綾織

誰のための綾織

飛鳥部勝則 / 2005 / 小説

読者が誤認するもの

人物人物の誤認複数を一人・XをY
人物人物の隠匿第三者の隠匿
体裁入れ子作中作
詳しい分類を見る
メタ
叙述N-語りの階層N-人物の同一と別N-語り手の正体
媒体固有T-小説/記録という体裁T-共通/配役表の嘘
効果E-作者は物語の外にいるE-作品と現実は区別できるE-別の名前は別の人物E-真相はひとつに定まる
手段M-隠蔽と隠し場所

⚠️ このページは作品の核心(真相)に触れます。未読・未視聴の場合はご注意ください。

まだ読んでいない方へ。この下は真相に触れます。

先に作品にあたるなら、こちらから。

仕掛けの要約【ネタバレ】

一冊の本が、三つの層でできている。

中身
内側作中作の小説(登場人物が書いたことになっている)
中間プロローグとエピローグ(作家と編集者が、その原稿について話す)
外側あとがき(作者名義で書かれている)

そしてそれぞれの層に、別の真相がある。

内側——名前のない登場人物が犯人

作中作の中で、事件が起きる。

真相——犯人は、名前を持たない登場人物である。

作中作の書き手が、原稿からその人物の存在を消そうとしたためである。

だから、その人物は「犯人」という呼称でしか現れない。

書き手が意図的に消したから、結果として叙述トリックになっている。

先行研究はこれを「天然の叙述トリック」と呼んでいる。

中間——原稿を書いた人物が、現実の犯人

作中作の謎は、その中では解けない。

書き手が真相を示す必要を持っていないからである。

一段外側に出て初めて、謎として認識できる。

そしてエピローグでは、作家自身が犯人だという別の真相が示される。

だがこれは作中作から導かれたものではなく、ただ提示されるだけである。

外側——導出の手続きが、あとがきに書かれている

なぜ作家が犯人だと分かるのか。

その手続きは、本編の中には書かれていない。

あとがきという、もう一段外側の層で示される。

作中作とプロローグを組み合わせることで、

読者はエピローグより前の段階で犯人を指摘できる、と作者は書いている。

そしてもう一つ——作家の名前

プロローグとエピローグに登場する作家は、

本書の作者と同じ名字で呼ばれる。

読者はこれを、作者本人だと読む。

別人である。

騙しの技術

登場人物を混同させて、一人を消す。

複数の人物の記述を重ねることで、一人分の存在が数から落ちる。

消した理由を、作中の事情にする。

作中作の書き手が「あの人を消し去ることに決めていた」。

叙述トリックが、作中の動機から自然に生じている。

作り手が仕掛けたのではなく、作中の書き手がやったことになっている。

謎を、その層では解けなくする。

作中作の中には、真相を示す動機を持つ者がいない。

謎が謎として立ち上がるのは、一段外に出たときだけ。

同名の人物を、作者の位置に置く。

現実の出来事(実際に起きた災害など)まで持ち出して、

作者本人だと思わせる。

真相を、層ごとにばらばらに置く。

どの層にも真相があるが、どれも完全ではない。

組み合わせて初めて全体が見える。

フェアプレイの担保

効き目

弱点・破綻しやすい点

(先行研究は「無茶なネタ」と書きつつ、成立は認めている)

読み返してみませんか。

仕掛けを知ってから読むと、同じ記述が別の意味で通ります。

関連する型アリスミラー城殺人事件どんどん橋落ちた探偵映画作者不詳

← 一覧に戻る