類別叙述トリック集成

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『アリス・ミラー城』殺人事件

北山猛邦 / 2003

ネタバレ度:致命
複合
叙述N-人物の同一と別N-人物の属性N-規模と距離
媒体固有T-小説/組版と書式T-小説/章題と目次T-小説/図版と付図T-共通/囮の仕掛け
効果E-登場人物は人間であるE-別の名前は別の人物E-図版は客観的な資料E-章題は物語上の位置を示すE-ジャンルの約束は守られる
手段M-隠蔽と隠し場所M-心理誘導
媒体小説

⚠️ このページは作品の核心(真相)に触れます。未読・未視聴の場合はご注意ください。

まだ読んでいない方へ。この下は真相に触れます。

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仕掛けの要約【ネタバレ】

孤島の城に、探偵たちが集められる。

そして一人ずつ殺されていく。

真相——犯人は、序盤から堂々と登場していた。

だが読者の目からは、存在そのものが隠されていた。

### 隠匿は、三つの誤認の組み合わせで成り立っている

先行研究は、これを三層に分解している。

| # | 誤認 | 内容 |

|---|---|---|

| 1 | 人数の誤認 | 十一人いるのに、十人だと読ませる |

| 2 | 人物の誤認 | その人物への言及を、別の登場人物のものだと読ませる |

| 3 | 人間/非人間の誤認 | 登場人物ではない「存在」だと読ませる |

### 人数の誤認——盤上の駒に見立てる

作中で、登場人物たちが自分たちをチェスの駒に見立てる会話をする。

白の駒だけに着目させたうえで

「人数は盤上の駒と同じになる」という台詞が置かれる。

→ 話者は白と黒を合わせた十一個を指している。

だが読者は、直前の流れに引きずられて「白の駒=十個」と読む。

古典の「十体の人形」を持ち出して、十という数に説得力を与えている。

### 人間/非人間の誤認——二重に仕掛けられている

① 実在の人物を、フィクションの登場人物だと読ませる

作中に、有名な児童文学の登場人物と同じ名前の人物がいる。

両者は括弧の有無で表記が区別されている——

フィクションの側には括弧がつき、実在の人物にはつかない。

だが、括弧つきの表記が過剰に置かれている。

本来は括弧が不要な語まで、徹底して括弧に入れてある。

その中に紛れて、区別が目立たなくなる。

② 人間を、人形だと読ませる

戸棚の中の人形が印象的に描写された直後、

別の人物がその名を呼ぶ場面が置かれる。

人形の描写と、呼びかけの台詞が並ぶ。

さらに「戸棚から離れると」という動きが加わることで、

人形に話しかけていたように読める。

この思い込みが、目撃証言の解釈を決定的に誤らせる。

### 章の扉にも仕掛けがある

各章の扉に、チェス盤の図と章題が掲げられている。

これがメタレベルの仕掛けになっている。

騙しの技術

過剰な表記で、必要な区別を埋める。

括弧は、区別のために使われている。

だが、区別が不要な場所にまで括弧をつける。

括弧が「意味のある記号」から「ただの体裁」に格下げされる。

読者は括弧を見なくなる。

数を、別のものに置き換えて数えさせる。

人数を直接数えさせず、駒の数として数えさせる。

→ 駒には白と黒がある。どちらを数えるかで答えが変わる。

その曖昧さの中で、少ないほうに誘導する。

古典の型を借りて、数に説得力を与える。

「十体の人形」という有名な小道具を持ち出す。

「十」という数が、ジャンルの約束として自然に見える。

人形の描写と、呼びかけを並べる。

どちらも嘘ではない。

並べる順序だけで、対応づけが作られる。

章扉という、本文の外側を使う。

図と章題は、物語の一部ではなく体裁だと読まれる。

フェアプレイの担保

(真相を踏まえて読み直すと、少々おかしなことになる)

効き目

弱点・破綻しやすい点

読み返してみませんか。

仕掛けを知ってから読むと、同じ記述が別の意味で通ります。

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