仕掛けの要約【ネタバレ】
本書は三つのパートに分かれ、それぞれに題が付いている。
- 「◯◯のうんざりするような現実」
- 「◯◯のめくるめく妄想」
- 「◯◯のまぎれもない現実」
題名が、そのパートの性質を明示している。
本書の大部分を占めるのは「妄想」と銘打たれたパートである。
つまり、隠していない。最初から「これは妄想だ」と告げている。
にもかかわらず、読者は騙される。
理由——「妄想」のパートが、妄想らしく感じられないからである。
細部が構築され、特殊な規則が導入されながらも、
その内部で整合が取れている。
→ 読者はそれを「もう一つの現実」として読んでしまう。
さらに、表紙と裏表紙の見返しに、会話が印刷されている。
それは本来、本文の途中に挿入されるべき「現実」である。
→ 本文の外側に、真相の一部が置かれている。
騙しの技術
題名で告げる。
「妄想」と書いてある。隠していない。
→ それでも成立する(TDB-0051・TDB-0058 と同じ型)。
妄想の内部で整合を取る。
「何でもあり」にしない。
特殊な規則を導入し、その規則の内側で事件を合理的に解決させる。
→ 「妄想」という札を貼りながら、中身は本格ミステリとして作る。
読者は、整合が取れているものを現実だと感じる。
本文の外側に、真相の一部を置く。
見返しに印刷された会話が、本来は本文中にあるべきものである。
→ 読者は見返しを「装飾」として読み飛ばす。
(T-小説/装丁と外装)
現実のパートを、短く挟む。
大部分が妄想であるため、現実のパートは相対的に小さく見える。
→ 分量の配分が、どちらが本体かの印象を作っている。
フェアプレイの担保
- 題名で「妄想」と明示されている。これ以上ない予告である
- 見返しの会話も、本を開けば読める位置にある
- ⚠️ しかし先行研究の著者は 「はっきり“妄想”と銘打っている以上、 読者としては最初からフェアプレイは期待できない」と述べている
→ 予告があってもフェアとは限らない、という立場
効き目
- 「妄想」と告げてなお成立する——予告の限界を試す作例
- 妄想パートの整合性が高いため、読者は現実として扱ってしまう
- 見返しという、通常は読み飛ばされる場所への配置
弱点・破綻しやすい点
- 結末が「夢オチ」に見えるという評
- 「妄想」と銘打たれているため、 そもそもフェアプレイの検討が意味を持たないという見方がある
- ⚠️ 読後感が微妙になるという評価