仕掛けの要約【ネタバレ】
プレイヤーは視点人物を、冒頭で加害行為をしていた人物本人だと読む。
その人物は事故で意識を失い、目覚めたときに記憶を失っている——という導入で、
以後の行動はすべて「加害者が逆恨みで報復している」物語として受け取られる。
実際には視点人物は別人である。
冒頭でその加害行為を制止しようとして体当たりした側の人物が、
自覚のないまま加害者の身体に入り込み、記憶を失ったまま自分をその加害者だと認識していた。
したがって動機の意味も反転する。
逆恨みに見えていた特定の人物への執着は、もともとその人物と深い関係にあったことの現れだった。
騙しの技術
記憶喪失を、語り手自身の誤認として使う。
語り手は嘘をついていない。語り手自身が自分を取り違えているため、
一人称の記述はすべて誠実なまま、読者を誤った前提に置き続ける。
身体と人格を分離する設定を、最初から前面に出す。
他人の身体に入り込むという能力が物語の主軸として提示されるため、
プレイヤーはそれを行動の手段として理解する。
実は同じ仕組みが視点人物自身にも適用されていることに思い至らない。
仕掛けの装置が、最も目立つ位置に置かれたまま見過ごされる。
動機を、成立する説明で埋めておく。
「事故のきっかけを作った相手への逆恨み」という説明が、行動の一貫性を保証する。
別の説明で置き換えられることを疑わせない。
フェアプレイの担保
- 特定の人物にだけ執着が集中しており、他の対象との扱いが明確に異なる
- その人物に対してだけ、能力の行使をためらう場面がある
- 病室の場面に、真相に直結する提示が置かれている
- 記憶を失っているという設定は最初に明示されており、後出しではない
効き目
- 語り手が自分を誤認しているため、記述の誠実さと誤誘導が両立している
- 真相が判明すると、行動の意味だけでなく感情の意味がすべて反転する。
嫌悪の対象に見えていた執着が、その正反対のものだったと分かる
- 身体を移り変わる設定そのものが仕掛けの正体であり、
仕掛けの道具が最初から画面に出ているという構造になっている
弱点・破綻しやすい点
- 記憶喪失は誤認を作る手段として広く使われており、警戒した読者には型として読まれる
- 身体と人格を分離する設定は前提の負荷が高く、受け入れられなければ全体が成立しない
- 真相への到達が特定の順序を踏んだ後の分岐に置かれており、そこまで到達しない読者には仕掛けが届かない
- 引用元
- [評論・研究書] 「エロゲで使われる叙述トリック改」
https://pub99.hatenadiary.jp/entry/20100311/p1 (確認 2026-08-04)