類別叙述トリック集成

一覧 / 聯愁殺

聯愁殺

西澤保彦 / 2002

ネタバレ度:致命
複合
叙述N-語り手の信頼性N-内心の帰属N-動機と心理N-語りの階層
媒体固有T-共通/囮の仕掛けT-共通/予告と挑戦T-小説/章題と目次
効果E-ジャンルの約束は守られるE-被害者は被害者E-提示された解決は真相E-犯人の内心は描かれないE-章題は物語上の位置を示す
手段M-心理誘導M-共犯と証言
媒体小説

⚠️ このページは作品の核心(真相)に触れます。未読・未視聴の場合はご注意ください。

まだ読んでいない方へ。この下は真相に触れます。

先に作品にあたるなら、こちらから。

Amazon で探す →

仕掛けの要約【ネタバレ】

連続無差別殺傷事件の、ただ一人の生存者がいる。

四年後、謎解きの愛好会が集まる。

議題は「なぜ彼女だけが狙われたのか」。

作家・元刑事らが、次々に仮説を出しては潰していく。

本の大部分が、この推理合戦で占められる。

### 真相——「問題篇」と「解決篇」の境目が、嘘である

読者は、章立てをこう読む:

| 見かけ | 内容 |

|---|---|

| 問題篇 | 第二章まで(事件の概略が説明される) |

| 解決篇 | 第三章以降(推理合戦) |

実際は、こうである:

| 真の構造 | 内容 |

|---|---|

| 真の問題篇 | 第九章まで(推理合戦を含む全部) |

| 真の解決篇 | 会がお開きになった後の、最終章だけ |

推理合戦そのものが、まるごと「問題篇」だった。

そして解かれる謎の階層が違う:

### 視点人物が、真犯人である

推理の場に同席し、思考が読者に示される人物がいる。

その人物が、真犯人だった。

そして仕掛けの要はここにある——

その人物は「真の解決」のほぼすべてを知っている。

しかし「見かけの解決」(なぜ自分が狙われたのか)は知らない。

だから内心の描写に嘘がない。

知らないことについて、本当に考えている。

騙しの技術

ジャンルの形式そのものを、囮にする。

これが本作の核心である。

古典的な多重解決ものの形式——「小説のほとんどが解決篇で、

そこで延々と推理合戦が展開される」——を先に読者に信じさせる。

先行研究が引くミステリ作家の評:

「アリバイとして使われたのが、 バークリーだのデクスターだのといった先例を巧みに(風評として) 用いることによるミスディレクション」

「解決編ではじめて重要な情報を出しつつ、 『本格』のスタイルを守るという離れ業」

規範を破っていない。規範の形式を、囮に使っている。

否定された推理からも、手がかりを出す。

推理合戦で出される仮説は、次々に潰される。

その「反証」の中に、真の問題篇の手がかりが混ざっている。

読者は「潰れた仮説」として捨てる。

(観察メモ★53「違和感型の手がかり」の隣接——

ここでは「用済みになった情報」として捨てられる)

視点人物の内心を、正直に書く。

真犯人でありながら、内心の描写に嘘がない。

「なぜ自分が狙われたか」を本当に知らないからである。

知識の範囲を分割することで、 嘘を書かずに真犯人の内心を書ける。

(観察メモ★27「隠蔽の主体がない型」の変種。 あちらは語り手が全部知らない。本作は一部だけ知らない)

被害者という立場を使う。

生存者であり、被害者である。

E-被害者は被害者。疑いの外側に置かれる。

章題で、構造を偽装する。

章の並びが、問題篇/解決篇という古典的な形式に見える。

E-章題は物語上の位置を示す

フェアプレイの担保

(仮説としても、それを潰す反証としても)

通常なら規範違反だが、実際にはそこが「真の問題篇」なので、 形式上は守られている

効き目

観察メモ★45(外側の知識は油断も生む)の実例

弱点・破綻しやすい点

古典的な多重解決ものを読んだことがないと、 「そういう小説だ」という前提が立たない

裏を返せば、真犯人の特定は比較的早いということでもある

読み返してみませんか。

仕掛けを知ってから読むと、同じ記述が別の意味で通ります。

Amazon で探す →

関連する型ストレート・チェイサー愚者のエンドロール探偵映画どんどん橋落ちた

← 一覧に戻る