仕掛けの要約【ネタバレ】
登場人物の数が、読者の思っている倍いる。
読者は八人の人物が山中で襲われていく話として読む。
実際にはそれぞれに双子の片割れがおり、十六人いる。
双子たちは山を挟んだ対称の位置にそれぞれ配置され、
ほぼ同じ行動を同時に取っている。
そのため章が切り替わっても、読者は同じ人物の続きを読んでいると思う。
一方が殺されても、もう一方が生きているため人数が合ってしまう。
誰が死んだのかを追っていた読者の計算そのものが、最初から成り立っていない。
騙しの技術
同じ名で呼ばれる二人を、別の場所に置く。
名前は同じ、行動もほぼ同じ、しかし場所が違う。
読者は名前で人物を同定するため、場所の違いを移動として処理してしまう。
舞台を対称に作る。
似た地形が対称に配置されており、場面の描写が食い違っても不自然に見えない。
猟奇的な描写で注意を奪う。
残虐な場面の強度が読者の注意を占有し、
人数の勘定や描写の食い違いを検算させない。
ホラーとして読んでいる読者ほど、ミステリとしての骨組みを見ない。
細部だけをずらしておく。
殺され方、損壊した部位、衣服の色といった要素が、
章をまたぐと入れ替わっている。読み返せば分かるが、初読では流れる。
フェアプレイの担保
- 細部の食い違いが繰り返し置かれており、読み返すと明白だという評価が複数ある
- 双子の存在を否定する記述はない
- 対称の地形は作中で描写されている
効き目
- 「登場人物の人数」という、疑うことすら思いつかない前提を標的にしている
- 猟奇描写が仕掛けの隠れ蓑として機能しており、ジャンルの誤認そのものが装置になっている
- 真相を知って読み返すと、細部の食い違いがすべて手がかりとして立ち上がる
弱点・破綻しやすい点
- 双子を全員分用意するという設定の負荷が極端に大きい。成立条件が特殊
- 猟奇描写が強く、そこで読者を降ろしてしまう危険がある
- 細部をずらす手法は、注意深い読者には早い段階で違和感として現れる