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さよなら神様

麻耶雄嵩 / 2014 / 小説

読者が誤認するもの

人物›人物の属性›性別
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層メタ
叙述N-人物の属性
媒体固有T-小説/一人称の空白
効果E-自称は語り手の属性を示す

⚠️ このページは作品の核心(真相)に触れます。未読・未視聴の場合はご注意ください。

まだ読んでいない方へ。この下は真相に触れます。

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仕掛けの要約【ネタバレ】

小学校を舞台にした連作短編集。語り手は少年探偵団に加わっている「俺」こと桑町淳で、各編は、自分を神と名乗る同級生が事件の犯人の名を告げるところから始まる。語り手たちは、その宣告を手がかりに事件を調べ直す。

読者は、自分を「俺」と呼ぶ語り手を、男子児童として読む。名前も、男女どちらにも取れるので、その読みを妨げない。

実際には、桑町淳は女子である。作中の同級生たちはそれを知っていて、それに応じたふるまいをする。語り手の性別を取り違えているのは読者だけで、作中で騙されている人物はいない。性別は、連作の中盤に置かれた一編で明かされる。

各編の犯人の宣告をめぐる構造は、この作品の看板になっている枠だが、宣告は語り手たちに向けて言われ、語り手と読者が同じ順に受け取る。収録したのは、語り手の性別の層である。

騙しの技術

  • 一人称の自称だけを置き、性別を書かない。 語り手は自分を「俺」と呼ぶ。一人称の語り手は、自分の性別をわざわざ語らなくても不自然でない。読者は自称から性別を補い、その補いを確かめる機会を与えられない
  • どちらにも取れる名前を添える。 語り手の名は男女どちらにも読める。自称で男性と決めた読者は、名前をその読みに合わせて受け取る
  • 作中の人物の反応は、事実のとおりに書く。 同級生たちは、語り手が女子であることを前提にふるまう。書かれている反応に嘘はない。読者はそれを男子どうしの反応として読み替える
  • 看板の謎を前に出す。 各編の冒頭で犯人が告げられるという強い枠が、読者の注意を「どうやって」「本当にそうか」に集める。語り手自身が何者かは、問いとして立たない

フェアプレイの担保

  • 中盤より前の編で、ある人物が語り手にだけ向ける嫉妬の表情や、語り手をめぐって誘いかどうかを問う台詞が書かれている。語り手が男子なら意味の通りにくい場面で、女子だと知って読み返すと自然に通る、と指摘されている
  • 同級生たちの語り手への反応から、早い段階で女子ではないかと気づいたという読者がいる
  • 語り手が自分を「俺」と呼ぶことは、作中の人物に対して性別を偽ることにはなっていない。地の文は、語り手を男子だとは書いていない

効き目

  • 性別が明かされると、それまでの編の、語り手をめぐる同級生たちの反応が別の意味で通る。嫉妬の表情や誘いを問う台詞が、語り手が女子だったから起きていたと分かる
  • 作中の誰も騙されていないので、反転は物語の中の出来事ではなく、読者自身の読み違いとしてだけ起きる
  • 宣告の枠に気を取られている読者ほど、語り手自身が問いの外に置かれる

弱点・破綻しやすい点

  • 読んでいて気づいた、という感想が少なくない。同級生たちの反応が、語り手の性別を示す手がかりとして強めに置かれているためと見られる
  • 作品の看板は各編の犯人の宣告で、性別の仕掛けはその陰にある。作者もこの仕掛けを主眼にはしていないのではないか、とする評がある。叙述の仕掛けを期待して読むと、驚きは小さい
  • 一人称の自称に寄りかかる型は広く知られていて、構えた読者には疑われやすい

読み返してみませんか。

仕掛けを知ってから読むと、同じ記述が別の意味で通ります。

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