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本陣殺人事件

横溝正史 / 1946 / 小説

読者が誤認するもの

体裁›他の形の擬態›手記・記録
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層複合
叙述N-行為の偽装
媒体固有T-小説/記録という体裁T-共通/語り手の信頼性
効果E-事件には外部の犯人がいるE-語り手は正直
手段M-密室M-機械仕掛けM-死体の細工

⚠️ このページは作品の核心(真相)に触れます。未読・未視聴の場合はご注意ください。

まだ読んでいない方へ。この下は真相に触れます。

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仕掛けの要約【ネタバレ】

本文は「探偵小説作家」が人から聞いた話を記録したもの、という体裁をとる。

読者はその記録者を、中立に事実を書き写す立場の人間として読む。

実際には書き手は情報を選び、書く語を選んでいる。

読者は「外部の何者かによる殺人が起きた」と読む。

そのために、現場に残された痕跡が、外部の犯人の存在を示すものとして提示される。

実際には死者たちの側で完結した出来事であり、外に犯人はいない。

この構造は作中で予告されている。 記録者は冒頭で、

先行するある推理小説からこういう書き方を学んだ、と明言している。

つまり「自分はこれから読者を誤導する書き方をする」と宣言したうえで実行している。

騙しの技術

記録という体裁で、書き手の選択権を正当化する。

人から聞いた話を書き起こしているという設定のため、書かれていないことがあっても不自然でない。

書き手が何を省いたかは、読者から見えない。

語を選んで、断定を避ける。

死の状況について、断定的な語を使わずに書く箇所があると指摘されている。

読者はそこを補って読み、書かれていない事実を自分で作る。

外部の犯人を示す痕跡を用意する。

現場に残された痕跡が、その場にいなかった人物の関与を示すものとして機能する。

痕跡自体は本物であり、意味づけだけが誤っている。

先に宣言することで、かえって隠す。

冒頭の予告は、読者に警戒を促すはずのものである。

しかし前置きとして読み流されるため、実質的に機能しない。

宣言したという事実が、後から見ればフェアプレイの担保にもなっている。

フェアプレイの担保

  • 書き手が誤導する書き方をすることを、冒頭で明言している
  • 現場の痕跡は実在し、記述に虚偽はない。意味づけが誤っているだけ
  • 密室を成立させる仕掛けは物理的に説明され、必要な要素は本文に提示されている

効き目

  • 叙述トリックを予告してから使うという構造が、1940年代の作品で既に実行されている
  • 日本家屋の構造・在来の道具立てを用いた密室と、記録という語りの体裁が噛み合っている
  • 先行作を名指しで参照することで、ジャンルの系譜そのものを作中に取り込んでいる

弱点・破綻しやすい点

  • 書き手が説明的に語りすぎるという批判がある(「考察は読者に委ねるべき」という評)
  • 密室の仕掛けが機械的に精緻なぶん、叙述の側の仕掛けは目立ちにくい
  • 現在の読者は「記録という体裁」自体を警戒するため、予告が本来の効果を持ちにくい

読み返してみませんか。

仕掛けを知ってから読むと、同じ記述が別の意味で通ります。

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