仕掛けの要約【ネタバレ】
観客は主人公と、彼が出会う男を二人の別々の人物として観る。
実際には同一人物であり、片方は主人公の内面が作り出した人格である。
映像では二人が同じ画面に映り、会話し、別々に行動しているように見える。
画面に二人いる=二人存在するという、映像で最も疑われない前提が仕掛けの標的になっている。
騙しの技術
画面上に二人を並べる。
実体のない側を、実体のある人物と同じ画面に配置し、同じ空間で行動させる。
映像は「そこに映っているものは存在する」という前提で観られるため、これが最も効く。
第三者の反応を配らない。
他の人物が反応するのは、常に一方に対してだけ。
三人での会話が最後まで成立しないという構成が保たれている。
数フレームの挿入で、先に置いておく。
出会う前の場面に、実体のない側の姿が一瞬だけ挿入される。
観客の意識には上らないが、後から検証できる位置に情報が置かれている。
行動の空白を、睡眠と時間の飛びで埋める。
主人公が眠っているあいだに片方が動く、という説明が与えられ、
知らない場所で目覚めるという記述が別人格の行動として後から回収される。
フェアプレイの担保
- 実体のない側の存在を疑わせる手がかりが繰り返し置かれている
(持ち物の一致、第三者が一方にしか反応しない場面、行動の空白)
- 先行する場面への瞬間挿入は、真相を知る前に情報が提示されていたことの証拠になる
- 主人公自身が自分の状態を把握していないため、語りの誤りに嘘の意図はない
効き目
- 同じ画面に二人を映してなお同一人物であるという、映像でしか作れない矛盾を成立させている
- 一人称の語りが映像に付随しているため、観客は主人公の認識をそのまま共有する
- 再視聴すると、第三者の反応がすべて一方向であることが見える
弱点・破綻しやすい点
- 二人が同じ画面にいる場面を積むほど、後から見ると物理的な無理が目立つ
- 「もう一つの人格」という解決は型として知られており、警戒されやすい
- 第三者との三人の場面を避け続ける必要があり、演出上の制約が大きい(TDB-0019 と同じ制約)